演劇の記録映像公開にあたって

演劇の記録映像公開にあたっての宣言  文:宮崎玲奈

ムニ/宮﨑企画では

①演劇として作られた作品の記録映像(劇場もしくは上演が行われる場所の観客を前提として作られた作品をカメラで記録・編集したもの)

②無観客で作られた映像作品(観客がいることを前提としない状態でカメラに向かって行われたもの自体、もしくはその記録)

の、大きく2種類の映像をこれまで制作してきました。このたび、記録映像の無料公開をYoutubeのムニ・宮﨑企画のチャンネルにて無期限で続けることにしました。

2021年1月現在、あくまでも演劇の支持体は見られること(観客がいること、観客のまなざし)にあると宮﨑は考えています。役を演じる俳優だけでなく、観客やそこで起こった要素すべてがその時の上演に関わってくるのではないかと、例えば私の演劇では咳払いを大きくしたお客さんがいたとしたら、できる限りその咳払いにも反応してみるのがいいのではないかと思っています。これは少し極端な例かもしれませんが。笑いが長めに起こった時に笑いが起こっているのを無視して次のセリフを言うのかどうか、そんな場合にも当てはまるでしょう。上演はなにかの再現ではなく、あくまでも上演一回一回です。ある一定の再現性も必要になってきますが、「そこで起こったことを無視しない」ということを気にかけています。

しかし、記録映像を観る時のわたしが画面の中の出来事に干渉していくということは一切起こらないでしょう。②に関しても無観客であるため、まなざしは俳優に干渉しないと言えます。もっと遠くの見えないもの、先のもの、に向かって上演している、それをカメラが捉えようとしているというような感覚かもしれません。

少し回りくどくなってしまいましたが、演劇作品と記録映像とはその性質が大きく異なります。演劇作品として観られることを前提に作っている作品については、記録映像を無料で公開するということをしばらく続けてみようと思います。それはわたしが高知の田舎で育ったためになかなか観劇の機会がなくWOWWOWで演劇の記録映像をよく観ていたことなども関係するかもしれません。演劇として作られたものなのだから、過去公演の記録映像はできるだけ公共的でよいのではないかという思いもあります。

まだまだ映像の技術が追いついていないところもあるかと思いますが、ムニ/宮﨑企画の作品を観るきっかけとなりましたら嬉しいです。記録映像のクオリティーも少しずつバージョンアップできるようにつとめてまいります。わたしにとっては、観客も上演の一部です。ぜひ次は劇場で上演に参加してください。 宮﨑玲奈