• ©上原愛

ムニ
『ことばにない』前編 “Not in Words”

作・演出:宮崎玲奈
2022年11月3日(木・祝)-13日(日)

あらすじ


  • 20代後半を迎える朝美、かのこ、ゆず、美緒は元高校演劇部であったことを共通点に、友人関係にある。ある日、顧問の先生の訃報と残された草稿が発見される。「わたしはことばそれ自体になりたかった」「欲望は見えなくされているだけだ」と書かれたそれは、完成された物語ではなく、未完成の言葉の集合体だった。4人は残された言葉を「聞く」ことからはじめようとする。


  • プロポーズされたという朝美の報告に動揺するかのこ。恋人の花苗は「見えないもの」についての映画を撮る。人生のいい時をつなぎ合わせた奇跡みたいな瞬間を待っているのだと。見えない声を聞こうとする花苗が怖くなる。長年付き合っていた恋人のプロポーズに一抹の不安を抱く朝美。地元にいる高齢の両親を心配するゆず。仕事に精を出す美緒は、私の中身はからっぽなのだと語りだす。


  • 残された言葉を聞く日々の中、起こる戦争やデモ、排除運動。4人の人生が偶然か必然か、歯車のように動いていく。

出演

石川朝日


浦田すみれ


黒澤多生(青年団)


田島冴香(FUKAIPRODUCE羽衣)


豊島晴香


南風盛もえ(青年団)


藤家矢麻刀


古川路(TeXi’s)


巻島みのり


ワタナベミノリ


和田華子(青年団)

空間設計:渡辺瑞帆(青年団)


舞台監督:黒澤多生(青年団)


照明:緒方稔記(黒猿)


音響デザイン:SKANK/スカンク(Nibroll)


衣装:坊薗初菜(青年団)


宣伝美術:江原未来  


制作:河野遥(ヌトミック)


制作部:青柳糸、寺前柊斗、林美月、彦坂紗里奈、渡邉結衣


演出部:安齋彩音、秋山実里、池田きくの、石井泉、伊勢広、大島康彰、加賀田玲


金指喜春(おんたま玉)、黒澤風太、佐々木明音、笹田伶、関彩葉、高橋あずさ(終のすみか)、富髙有紗、筒井野瑛


冨岡 英香、西出結、彭夏子、彦坂紗里奈、前田倫、山田朋佳、伊藤拓(青年団)


芸術総監督:平田オリザ


技術協力:中條玲(アゴラ企画)


制作協力:蜂巣もも(アゴラ企画)


主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場


助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)


独立行政法人日本芸術文化振興会

INTRODUCTION

『ことばにない』という戯曲(演劇の脚本のことを戯曲と言います)は2019年から約3年間執筆中で、現段階で上演時間4時間程度を予定しています。なぜ3年?なぜ4時間?と思われる方も多いと思います。3年の間に、私自身も物語も変容していったため、言語化しきれない部分もありますが、できる限りを以下に書きたいと思います。

日本語で、レズビアンの女性が主人公の物語を書きたい、という思いがありました。
日本語は言語構造としてカミングアウトが成り立ちづらい構造にあるのではないかなど、セクシャリティに関して日々悶々としながら、時に楽しく一人の生活者として過ごしています。セクシャリティ、アイデンティティを含めた自分自身の生活者としてのあり方と、書き手として頭の中に溢れる言葉とが結びついてくるようになり、レズビアンの女性が主人公の物語を書きたい、と思うようになりました。
2021年に、クィアなキャラクターが出ていたり、クィアを謳う演劇を観て、落ち込んで帰ることが多かったことも一つとして背景にあります。その落ち込みはフィクションの駆動にセクシャリティが利用されることへの怒りや、周囲との価値観の違い、温度差への嫌気から来るもので、現実にもフィクションの世界にも心底うんざりしました。そんな私を励ましたのは自分自身の内側にある声と過去現在の当事者たちが残した声、今、わたしにとって必要な物語を書きたいという思いです。


見えている世界のことを描いたとしても、フィクションの世界は現実の世界とは異なるものとして立ち現れます。こうあってほしいと願う世界では、日本語でアイデンティティについて語ることも可能なのではないか。普遍という檻の中にも、虹色の檻の中にも閉じ込められる気はありません。『ことばにない』の世界に生きる人々の生き方を通して考えていただけるよう、目指しています。

最後になりましたが、上演時間4時間という時間についての話です。これは、今作で物語の中の一人一人を描くために必要な時間でした。そのため、最初から最後まで4時間という時間を通して、作品を観ていただきたく思っています。作品内容に関しての事前のアナウンスの実施や、上演途中で気分が悪くなった場合等には、途中退場していただけるよう、導線も確保いたしますので、気軽にお声掛けください。腰が痛くならないようにクッションも用意する予定です。途中休憩もございます。上演時間等に関しては詳細が決まりましたら、ムニホームページ、SNSにて細かくアナウンスしていきますので、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。

以上長くなりましたが、6月末の作者の声としてこの場に書き留めておきます。散々なことも多いですが、自分らしくいることを歓迎してくれるコミュニティーや過去現在の人々の存在に改めて感謝しながら。

2022年6月30日 宮崎玲奈

 

当日パンフレットの言葉

ロビーでくつろいだり、休憩中に外の空気を吸ったりしながら、4時間半を過ごしていただければと思います。お隣には、まいばすけっともあります。各人の過ごしやすいやり方で、無理はせずで。扉は開けられますので、途中で気分が悪くなった場合もお知らせください。

閑話休題、少しだけこばなしを。

執筆期間、演出期間、めげそうになった時、よく聞いていたのがGEZANの音楽で、こんなフレーズがありました。「おわらない歌がおわったから 暗闇なんだ現在 リンダリンダじゃもうふるえない心から 今はじまる」という歌詞(Absolutely Imaginationという曲です)。 今の時代の空虚の中で、いかに振る舞うかという歌だと受け取っています。わたし自身、空虚に合わせるようなやり方が嫌になっちゃって、今はじまる、の方に向かいたくなった。今なら書けるかもと思ったから書きはじめました。いつのまにか3年くらい経っていましたが。書いている期間、神統の問題が起きたり、1週間おきに問題発言の報道がされていきました。迷った時、掛札悠子さんの言葉のこと、掛札さんの存在のことが頭の片隅にありました。ここでお名前を挙げるのが合っているのかどうかもわからないのですが。

最後に。母からの手紙に、早回しでドラマも観るような時代にこんな長い演劇に付き合ってくれるみんなにもっと感謝した方がいいと書かれていました。今日この演劇を観に来た人も、『ことばにない』という物語の関係者なのだと思います。わたしたちは、今日のあなたに対して、精一杯をがんばります。

俳優も私もセクシャリティに関してなど、個人的な話を稽古場でせずとも、今回の作品の制作を進めることが出来ました。レズビアンアイデンティティについての作品がやりたいのだということを受け入れてくださった皆さんには感謝し尽くせません。素晴らしい俳優さん、スタッフさんたちのお名前もぜひ覚えて帰っていただきたいです。この物語は、来年の後編へと続きます。あなたの日常がこの劇場を出た後もつづくように。すこしわがままなお願いですが、登場人物たちのことを最後まで見届けていただければと思います。手作りで毎日を想像していった先の未来で会いましょう。

本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございます。宮崎玲奈

劇評など

2022年11月10日(木)朝日新聞首都圏夕刊、文化芸術評欄にて、演劇ジャーナリストの徳永京子さんによる、ムニ『ことばにない』劇評が掲載されました。https://www.asahi.com/articles/DA3S15470783.html?_requesturl=articles%2FDA3S15470783.html&pn=2